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痛風・高尿酸血症の薬

(1997年記す)




【はじめに】

痛風は血液中に「尿酸」という廃棄物が増えることによって引き起こされる病気で、その症状は「風が吹いても痛い」といわれる「痛風発作」です。
最初の発作は、大半が足の親指の関節の激痛で始まります。ここは体内でも最も温度が低い部位に含まれるので、結晶ができやすいとされています。また発作の少し前に、「何となく足の親指の付け根がムズムズする」といったような前兆があることが多く、そうしているうちに激痛の発作へと移行します。

「尿酸」は大部分が血液中にありますが、代謝によって尿中に排泄され、血液中では一定の濃度に保たれています。しかし体内での尿酸合成が増えてきたり、体外への排泄が低下すると、血液中の尿酸が徐々に増えてきて「高尿酸血症」の状態になるわけです。
尿酸はもともと水に溶けにくい物質なので、尿酸値が高いままの状態が続くと、溶けきれずに尿酸の結晶が析出して関節などに沈着します。このように沈着した尿酸が剥がれると、異物として認識されてしまい、白血球(貪食作用のある好中球)が集まってきて炎症反応が起こり、痛風発作となるわけです。(この点について最近の報告では、剥がれた尿酸結晶に結合した蛋白質が注目されており、特定の蛋白質と結合した尿酸の結晶では痛風発作は起こらないとも言われます)

尿酸の基準値は、男性で3.5〜6.5mg/dl、女性で2.6〜5.0mg/dlです。いずれも7mg/dlを超えるようであれば治療の対象となり、8mg/dlを超えるような状態が続くようであれば、痛風発作が起こってくるといえます。尿酸値は、検査前日の飲食などの影響が出てくるため、最終的な判断をするためには、複数回の検査が必要です。

痛風の治療を怠っていると、やがて発作が頻繁に繰り返されるようになり、発作と発作の間の期間もだんだん短くなっていきます。こうして7〜8年かけて痛風が慢性化していくと、足・耳・肘・膝などにこぶ(瘤)ができたように腫れ上がる「痛風結節」という症状があらわれます。このような状態になると、外見ではわからなくても腎臓や尿路系に尿酸の結晶が沈着し、腎機能低下(痛風腎)や尿路結石を引き起こしてしまいます。


【日常生活で注意すること】

痛風の原因物質である尿酸は、「プリン体」と呼ばれる共通の化学構造を持つ物質が分解された結果として出来る最終産物ですが、体内の代謝の結果出来るものとして、古くなった細胞が壊されるときに核酸(DNAやRNA)の代謝産物として出来る尿酸があり、また一方では食事で摂取した動物性食品(特にモツ類)や、ビールなどに含まれるプリン体が、分解されてできる尿酸とがあります。食生活のアンバランスが原因と考えられる場合には、これをまず是正する必要があります。

具体的にプリン体を多く含む食品としては、煮干し、レバー、かつおぶし、ナッツ、かまぼこ、たらこ、貝類、肉類などがあり、先に述べたビールもプリン体を多く含んでいるので、これら飲食物の摂取を控えることが大切になります。前者の細胞崩壊に基づく尿酸が増えている場合には、背景にある別の疾患(溶血性貧血や腫瘍など)の治療が優先されます。

ところで、高尿酸血症の原因として薬剤の影響も見逃せません。高血圧や心不全、浮腫の治療に用いられている利尿剤では、腎臓における尿酸の排泄を抑制してしまう作用があるため、痛風を引き起こしてしまう可能性があります。心当たりがある場合は、主治医に申し出るようにしてください。

また、薬による治療が始まったら、水をたくさん飲んで尿量を増やすようにして下さい。これは腎結石・腎障害を防ぐ目的があります。



【痛風・高尿酸血症の薬物療法】

痛風発作や高尿酸血症に対して用いられる薬は、それぞれに使う目標があり、患者さんの病態に応じて変わっていきます。
よく使われる薬剤の分類と、代表的な薬の「商品名」を以下に列挙してみました。

  1. 鎮痛剤 − ナイキサン、ボルタレン、インテバン、ミナルフェン、ロキソニン、ポンタール、フェルデン、フルカム、ナパノール、スルガム、ペオン、ニフラン等々。
  2. 痛風発作緩解薬 − コルヒチン
  3. 尿酸合成阻害薬 − ザイロリック、アロシトール、アデノックなど
  4. 尿酸排泄促進薬 − ユリノーム、プロベネミド、アンツーランなど
  5. 尿アルカリ化剤 − ウラリット




1.鎮痛剤

痛風の治療では、まず痛風発作が起こっている場合には
、その痛みを取り除く治療を行ないます。鎮痛剤としては「非ステロイド性消炎鎮痛剤」と呼ばれる一連の薬剤が用いられています。

この系統の薬は非常に多くの種類がありますが、厳密に言うと2つの分類に分けられます。一つは「酸性非ステロイド性消炎鎮痛剤」、もう一つは「非酸性非ステロイド性消炎鎮痛剤」になるのですが、実際に使われる頻度は、特殊な場合を除いて圧倒的に「酸性」の方が多いため、普通「非ステロイド性消炎鎮痛剤」というと、この「酸性非ステロイド性消炎鎮痛剤」を指すことが多いものです。

「酸性」非ステロイド性消炎鎮痛剤として有名な薬に、アスピリンやイブプロフェンなどがあり、一般の薬局でも頭痛や生理痛などの薬として販売されていますね。
この系列の薬の作用機序は、「プロスタグランジン」という物質の生合成を阻害することによるとされています。プロスタグランジンは、一連の炎症反応において種々の影響を及ぼす物質であると同時に、痛みに対しても増強する作用があるとされており、このプロスタグランジンの合成を阻害することによって、抗炎症作用ならびに鎮痛作用を発揮させるというわけです。

副作用としては、特徴的なものとして「胃障害」が良く知られています。これもプロスタグランジン生合成阻害作用と無関係ではありません。胃では消化の際に、極めて強い酸が分泌されて食べた物を消化するのですが、そのときに胃の粘膜を保護している粘膜などの防御機構に重要な働きをもっているのも、また「プロスタグランジン」なのです。このためプロスタグランジン生合成を阻害する酸性非ステロイド性鎮痛消炎剤の服用は、胃粘膜の防御機構をも抑制してしまうことになり、結果として胃潰瘍などの原因となってしまうことがあるので注意が必要です。胃障害の副作用を、できるだけ防ぐためには、空腹時を避けて食後に服用するようにします。もし食後に服用できない場合は、牛乳などと一緒に服用すると良いでしょう。

一方、「非酸性」非ステロイド性鎮痛消炎剤については、このような胃障害の副作用も少なくなりますが、鎮痛作用は弱くなってしまいます。

以上のような鎮痛消炎剤は、痛風発作に対して、先にも書いたように痛風の痛みは非常に激しいために、初回は通常より多めに服用することも多いものです。



2.痛風発作緩解薬

痛風発作の予防薬として用いる薬です。先にも書きましたが、痛風の発作が起こるときは前触れ症状を感じることがあり、むずむずするような独特の感覚があります。
この時期に「コルヒチン」という薬を服用すると、発作を抑えることができます。

コルヒチンは尿酸代謝にほとんど影響せず、鎮痛・消炎作用もありません。痛風発作の予防効果については、顆粒球(白血球の一つ)が尿酸の結晶の析出した関節の炎症領域に、集まっていくこと(これを遊走といいます)を抑制することによって、発作を抑えると考えられています。
顆粒球遊走抑制作用について、コルヒチンはもともと抗有糸分裂薬で、細胞分裂の「有糸分裂」と呼ばれる過程を阻害する働きがあり、種なしスイカの薬剤としても用いられていたものなのですが、この有糸分裂抑制作用が顆粒球の運動性を抑制するのではないかという説があります。
他にも痛風発作予防の作用機序として、好中球(顆粒球の一つ)が、食作用(この場合尿酸の結晶を包み込む作用)を示した後に生成されてく強力な発痛及び炎症物質である糖蛋白の生成及び遊離を抑制するとの報告もあります。

コルヒチンの副作用としては、まず第一に「下痢」があります。これは結構激しい場合もあるほか、投与と発症の時間差があること(服用後しばらくの時間を経過した後に下痢する)も多いものです。他に脱毛や白血球・血小板の減少、再生不良性貧血などの重篤な副作用の可能性があるので注意が必要です。これらの副作用には、コルヒチンの有糸分裂抑制作用が関与していると考えられますが、他に男性が本剤を服用した場合に無精子症となったり、あるいは配偶者よりダウン症候群などの先天異常児の出生率が高いとの報告もあります。

先にも触れたように、痛風発作の予防には前兆に気付いた時点でコルヒチンを服用するのが効果的で、発作発生後でも服用時間が早いほど効果的です。抗炎症作用は無いので、以降の服用は無効となってしまいます。



3.尿酸合成阻害薬

「尿酸」は、人間ではヒポキサンチンやキサンチンと呼ばれる物質が酸化された結果、合成されます。この酸化反応を触媒するのがキサンチンオキシダーゼという酵素なのですが、このキサンチンオキシダーゼを阻害するのが「アロプリノール」という薬で、尿酸合成阻害薬に分類される上記の、ザイロリック、アデノック、アロシトールという商品名の薬剤の成分は、いずれもこの「アロプリノール」です。

アロプリノールという薬は、服用すると体内で代謝されてアロキサンチンという物質に変換されますが、このアロキサンチンは、アロプリノールをさらに上回るキサンチンオキシダーゼ阻害作用を持っており、実質的な尿酸合成阻害作用はアロキサンチンによるものが大きいとされています。
作用機序が尿酸合成阻害作用によるものですから、この薬が用いられるのは、高尿酸血症の原因として、尿酸の合成が過剰になっていると考えられる場合()や、その他にも、尿酸排泄促進薬(後述)が無効の場合、尿路結石がある場合、腎機能が低下している場合などに適している薬剤といえるでしょう。
急性の痛風発作の後では、比較的大量の非ステロイド性消炎鎮痛剤で発作を完全に抑え、薬を徐々に減量して安定を保った後に、初めて処方されます。また投与初期には尿酸値の変動により、痛風発作の一時的な増強をみることがあります。

副作用としては、まず過敏症があります。アロプリノールの過敏症は、投与数日〜数週間後にあらわれることも多く、場合によっては数ヶ月〜数年後にあらわれることもあります。発疹や悪寒、発熱などの症状があらわれたら、速やかに投与を中止して受診するように心がけて下さい。さらに皮膚症状にも注意が必要です。Stevens−Johnson症候群、Lyell症候群と呼ばれる重篤な皮膚の副作用報告もあるので、先の過敏症とも併せて、発疹などの症状に注意しましょう。
他に重篤な副作用として、無顆粒球症や再生不良性貧血の報告もあります。
薬剤服用にあたっては、水分を多く摂取するように努め、1日の尿量を2L以上になるようにすることも大切です。

※痛風のタイプ

痛風は尿酸値が高いことによって誘発されるものですが、尿酸値が高くなってしまう背景には、冒頭にも書きましたが、何らかの理由で尿酸の合成が過剰になっているか、あるいは尿酸の排泄が阻害されているか、いずれかの要因があるわけです。個々の痛風の患者さんが、どちらのタイプに属するかを判断することは、薬物治療を行なう際にも、重要なポイントになってきます。これを判断する目安としては、24時間尿をとって、その尿酸排泄量が400mg以下なら排泄が阻害されているタイプ、逆に900mgを超えるようであれば、合成が過剰になっているタイプと推定できます。他には尿中のクレアチニンと尿酸の比率で推定することも可能です。

〔2001/01/23補足〕

この項に関して、アロプリノールがキサンチンオキシダーゼを阻害して、尿酸合成を抑制した場合に、「その前駆物質が蓄積しないのか?」とのご質問が、「くすりの質問Box」にあったので、補足して説明しますね。
尿酸というのは、核酸などのプリン体の最終代謝産物として生成されるものなのですが、まずは代表的な経路の一つを図で示しましょう。



【アデニンから尿酸への代謝経路】


図では、核酸の構成物質であるアデニンから、最終代謝物質である尿酸までの経路を示しましたが、ここで要点となるのは、まずアロプリノールは最後のキサンチンから尿酸への変換に必要なキサンチンオキシゲナーゼという酵素を阻害して、尿酸の生成を抑えます。ところが、キサンチンとヒポキサンチンの形でも尿中に排泄されます。薬の影響がない場合には、圧倒的に最終代謝産物の尿酸として排泄されますが、アロプリノールの影響で尿酸生成が抑制された場合には、キサンチンあるいはヒポキサンチンの形で尿中に排泄される割合が高くなるというわけです。このとき、尿酸の生成もある程度は残されているので、尿酸値がゼロになるわけではありません。仮にキサンチンオキシダーゼの強度の阻害や欠損が生じるようだと、今度はキサンチン結石がみられることになるので、適度に分散というのが大切です。
さらにもう一点、重要なポイントとして、ヒポキサンチンからは赤の矢印に示したように、アデニンへ再合成される過程も存在します。この経路を「サルベージ経路」と呼んでいますが、ヒポキサンチンが過剰にある場合には、この経路が生きてくるというわけです。



4.尿酸排泄促進薬

血液中の尿酸は、腎臓の糸球体で濾過されて排泄されますが、一部は尿細管というところで再吸収されます。尿酸排泄促進薬は、この再吸収を抑制することで、結果として尿酸の排泄を促進する作用があります。多くの患者さんで、体内の尿酸生成速度よりも速い速度で尿酸を排泄させるため、血中の尿酸濃度を下げていきます。
ただし、尿酸合成阻害薬もそうですが、これらの尿酸値をコントロールする薬は、高尿酸血症の治療を開始してから、多くの場合6ヶ月頃に血中濃度が安定してきます。逆に言えば治療開始6ヶ月くらいまでの間は、薬剤投与のために体液中の尿酸動態に変動を生じるわけです。この変動が関節周囲の結合組織において痛風発作を生じる誘因となります。この理由については、関節液中の尿酸濃度と組織液中の尿酸の濃度勾配差に起因すると考えられています。

もし尿酸値をコントロールする薬を服用中に痛風発作が起こった場合は、尿酸値コントロール剤の投与を中止して、再び非ステロイド性鎮痛消炎剤の投与に切り替える必要があるため、速やかに受診するように心がけて下さい。安易に尿酸値を下げようとして薬を服用したりすると、かえって逆効果となる危険性があります。
もう一つ注意しなければならない事として、特に本系統のような尿酸排泄を促進する薬を服用した場合、必然的に尿中に排泄される尿酸の量がふえてきますが、この尿中の尿酸が、今度は尿路結石となってしまい、血尿が出たり腎臓に激しい痛みが起こってしまう危険があることです。(たまりませんね!!)
尿路結石ではシュウ酸カルシウムなどの結石が出来ることが多いものですが、尿酸の結石も比較的多いものです。さらに尿酸の一つの特徴として、酸性の状況下において、より結晶を析出しやすくなります。
このため尿路結石を予防するためには、十分に水分を摂って尿量を1日2L以上に保つとともに、尿をアルカリ性に保つことで予防することができます。
他に副作用としては、過敏症、肝障害などに注意して下さい。

【追加(2000.2.26)】

先の2/23に、ベンズブロマロン(代表的商品名:ユリノーム)による劇症肝炎の副作用報告が発表されました。死亡例も含み、重篤な副作用であることは間違いありません。この件については、手元に届いた症例報告4例(いずれも死亡)によると、初期症状は倦怠感や食欲不振が共通しています。おそらくこうした症状があらわれたときには、既に肝機能検査値が上昇しているものと思われますので、軽くみずに早めに血液検査を受けることが大切かと思われます。



5.尿アルカリ化剤

上記のように尿酸排泄促進剤を服用した場合、尿中に排泄される尿酸の量が増えるので、尿酸結石の予防や尿酸の排泄を良くするために、尿をアルカリ性に保つ必要があります。この目的で投与される薬が、クエン酸カリウム・ナトリウム合剤の商品名「ウラリット」という薬です。

この薬は、服用すると生体内でクエン酸回路(TCA回路とも呼ばれています)に入り、重炭酸塩、炭酸ガス、水分に変換されていきます。このため体内はアルカローシスといってアルカリ性側に傾くのですが、これを中性に保つために尿中に重炭酸イオンを排泄する機構が働いて、結果として尿がアルカリ性に傾くという事になるわけです。こうした作用機序から、尿酸排泄のための尿のアルカリ化の他にも、アシドーシスといって体内が酸性に傾いてしまった状態を改善する薬剤として、比較的大量投与されることもあります。

この尿アルカリ化剤を服用するにあたって、注意したいことが二つあります。一つはクエン酸カリウムを含んでいるため、高カリウム血症となってしまう可能性があることで、もう一つは過度のアルカリ化となってしまう恐れがあることです。尿を過度にアルカリ化した場合には、別にリン酸カルシウムという物質がアルカリ性側で不溶性となる性質により、今度はリン酸カルシウムによる尿路結石ができてしまう恐れがあります。尿路結石を防ぐために服用した薬によって、尿路結石ができてしまうなんて、シャレになりませんね。尿のpHが6.2〜6.8の範囲内になるようにコントロールされると良いでしょう。

最後にもう一回……、「1日の尿量が2L以上になるように、水分を多くとるように心がけてください。」(しつこい!!…ってか。)





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